昨今のAIブームについて思うこと〜中小企業は何から始めればいいのか

昨今のAIブームについて思うこと〜中小企業は何から始めればいいのか

昨今のAIブームについて思うこと

最近、AIに関する情報を見聞きしない日はありません。
日々アップデートされるAIの情報。
SNSで洪水のように押し寄せる、AIを使った儲け話やプロンプト例。
私はAIの活用やその先のデジタル化を支援する立場なのに、そんな情報に辟易しています。

「これからはAIを使えないと困る」

「このツールを使えば仕事が変わる」

そう言われる一方で、現場ではこんな声も多いように思います。
結局、うちの仕事の何に使うのか。
自分の仕事に関係があるのか。
何から始めればよいのか。

私自身も、AIをいろいろ試していて、この記事づくりも、その一つです。
使ってみて思うのは、AIは確かに便利ですが、何でもできるわけではありません。
使えば使うほど、「AIは、なんでもできるけど、万能ではない」という思いが強くなってきました。

中小企業がAIを始めるなら、
難しい機能を覚える前に、まず自分たちの仕事を見ることが大切ではないかと考えています。

40年前のパソコンと今のAIは似ている

私自身、約40年間ITに関わる仕事に携わっています。
1980年代前半、企業でもパソコンがすこしずつ導入され始めました。
その頃のパソコンは、
何でもできそう。だけど、何のために、どう使っていいかわからない。
という代物でした。
そんな中、私のような数少ない人たちが試行錯誤しながら使い始めて、徐々に使い方が社内に浸透していったと記憶しています。
今のAIブームは、その当時のパソコンと同じ状況のように感じています。

大企業では、人材や予算を投入して全社的なAI活用を進める取り組みもあります。
しかし、中小企業が同じ方法を取る必要はありません。むしろ、限られた人員や予算の中で大企業のやり方をそのまま真似すると、AIを使うこと自体が負担になってしまう可能性があります。

中小企業には、中小企業に合ったAIの使い方があるはずです。
そんなAIをどう活用していったらいいか、私自身の経験も踏まえてヒントになる話ができたらと思います。
40年前と同じように、今も多くの人が試行錯誤しながら、自分の仕事に合った使い方を探している段階なのではないでしょうか。
そして、私自身もその一人です。

私自身、AIを仕事で使っています

私がAIを試している仕事は、
大きく分けると次の5つです。

  • 研修資料のアイデア出し
  • 資料づくりの補助と下書き
  • SNSの投稿下書きや画像作成
  • 対応すべきメールの仕分け
  • 業界情報の収集

たとえば、研修資料をつくるとき。
頭の中にある考えを言葉にしたり、構成のたたき台をつくったりします。
一人で考えていると、意見が偏ったり、同じところを行き来しがちです。

そんなときAIは、壁打ちの相手になります。
「この順番で伝わるか」

「別の切り口はないか」

「この言葉は分かりにくくないか」
問いを返しながら整理すると、頭の中にあったものが徐々に言語化されていきます。
もちろん、完成品を任せるわけではありません。
最後に判断し、直し、責任を持つのは人です。
それでも、ゼロから始める負担は軽くなったと感じています。

便利だったのは、「作業の前」が整うこと

AIを使って特に助かっているのは、仕事に取りかかる前の整理です。

たとえばメールです。
メールを1通ずつ開いて、優先順位を考える。
熟読すべきか、返信が必要かを判断する。

この作業は、意外と時間と頭を使います。
AIで対応すべきメールを整理できると、メールを開く前に、何から着手すべきかが見えてきます。

資料づくりでも同じです。
白紙から書き始めるより、下書きや構成案がある方が早く、その案をもとに自分の言葉へ直せます。
情報収集でも、自分だけでは見つけにくい情報を探したり、調べるべき論点を整理したりする際に役立ちます。

AIが仕事をすべて終わらせるのではなく、やるべき仕事に入る前の迷いを減らす。
ここに、日々の仕事で使う価値があるように感じています。

ただし、答えを鵜呑みにはできません

一方で、AIを使っていて強く感じることもあります。
それは、

AIの答えをそのまま信じてはいけない

ということです。
もっともらしい文章や回答でも、事実と違うことがあります。
こちらが指摘すると、
「情報が古かった」としれっと前の回答を撤回することもあります。
そのため、AIの回答をそのまま資料やメールに使うのは危険です。

事実関係の確認。

数字や固有名詞の確認。
相手に失礼がないかの確認。
こうした最後の判断は、人が担う必要があります。

AIは、考える仕事を奪う道具ではありません。

むしろ、人がどこで判断するかをはっきりさせる道具だと思います。

難しいAI活用を最初から急ぐ必要はありません

Codex、Claude Code、スキル、メモリ、プロジェクトといった言葉。
長いプロンプトや、AIエージェントによる自動化などの
複雑なAI活用。
これらが役立つ場面は、もちろんあります。
ただ、中小企業がAIを試す最初の一歩として急いで覚えるものではありません。

私はそう考えています。
(実はClaude公式のチュートリアルでも難しいプロンプトは不要です、と謳っています。)

先に考えたいのは、自分たちの仕事のどこで試せるか
ということです。

たとえば、次のような仕事です。

  • メールの優先順位を整理する
  • お客様への案内文の下書きをつくる
  • 会議メモを整理し、共有文をつくる
  • 提案資料の構成を考える
  • アイデア出しの壁打ちをする
  • 調べるべき情報を洗い出す

まずは、日々繰り返している仕事から1つ選んで試してみてください。
合えば続ければよいし、合わなければ、別の仕事を試せばいいだけです。
最初から全社の仕組みを変えたり、
高額なツール導入を決めたりしなくても、AIとの相性は確かめられます。

「会社のAI活用」より、「自分の仕事」で小さく試す

AI活用と聞くと、全社導入や業務改革の話になりがちです。
しかし、最初から大きく始めると、決めることが増えます。

  • どのツールを使うか
  • 誰が管理するか
  • 情報をどう扱うか
  • 費用に見合うか
  • 現場で本当に使われるか

だから私は、会社全体の話をする前に、一人ひとりの仕事を見る方がよいと思います。
「毎日、毎週、時間がかかっている仕事は何か」
「下書きや整理から試せる仕事は何か」
「人が最終判断すべき部分はどこか」

この3つを見れば、AIを試せそうな仕事が見つかりやすくなります。
AIに任せる部分と人が責任を持つ部分を分け、その小さな試行から始める方が、中小企業の現場には合っているはずです。

ただし、仕事でAIを使う場合には注意も必要です。
会社の機密情報やお客様の個人情報などを、社内のルールを確認せずにAIへ入力することは避けなければなりません。
この点については、別の記事で詳しく解説します。

AIを使う目的は、本来の仕事に時間を戻すこと

AIを使うこと自体が、目的ではありません。
メール整理や資料の下書きにかかる時間を減らし、
お客様と話す時間を増やす。
現場を確認する時間を増やす。
考えて判断する時間を増やす。

AIはそのための選択肢の一つです。
便利そうな情報に振り回されるのではなく、自分たちの仕事に照らして考える。
難しい機能は、必要になったときに学べばよい。
まずは、自分の仕事でAIを試す場所を1つ見つける。
そこから始めることが、中小企業にとって無理のないAI活用につながるのではないでしょうか。